ビジネスも、マーケティングも、システムも分かる立場として、橋渡しの存在でありたい 株式会社JQ下田幸祐氏

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自社サービスも提供しながら、デジタルマーケティングの分野でJリーグはじめ大手企業の新規事業も手掛けるJQ。そのユニークな立ち位置は、あくまで自社サービスにこだわる姿勢により築かれている。


-デジタルマーケティングのコンサルティングから、サボテンのECサイト運営まで、幅広く取り組んでいらっしゃるようですね。

社名の「JQ」は、元素記号にないアルファベット「J」と「Q」が由来であり、この世にないサービスを作りたいという思いで創業しました。自社サービスを作ることを社是としており、サボテンのECサイトも、その一環で運営しています。これらの自主事業と、コンサルティング事業がJQの2つの軸です。

JQのコンサルティング事業では、新規事業の企画戦略立案など超上流工程のプロジェクトや、アプリ開発のプロジェクトマネジャーとしてデジタルマーケティング案件を担当しています。最近、「デジタルトランスフォーメーション」が話題になり、デジタルマーケティングや、デジタルを活用した新規事業案件のご依頼が増えましたが、自分たちでサービスを作っているからこそ実体験をもって提案できるところが、他社と異なるところです。私自身コンサルファーム出身ですが、現場を見ていないとやはり机上の空論に終始してしまうと感じます。

 自社事業では、前述のサボテンのECサイト「solxsol(ソルバイソル)」(https://www.solxsol.com/)や、マーケティングリサーチサービスの「&Check(アンドチェック)」(https://www.andcheck.jp/)を開発・運営しています。自社事業をしていることで、事業運営やマーケを体感したり、またAIなど最先端の技術を取り入れたりしていることが、コンサルティングでも強みになっています。

 たとえばサボテンのECサイト「solxsol」については、JQがおそらく多肉植物業界初で開始したECサイトですが、自社で商品開発やサイト運営すべて行っています。はじめは苦労しましたが、現在は本も8冊出版するなど業界内でステータスを築いています。

▲多肉植物専門ストア「solxsol(ソルバイソル)」

▲多肉植物専門ストア「solxsol(ソルバイソル)」

「&Check」はアンケートから、回答者に対するチャットインタビュー、動画調査などをシームレスに行えるサービスです。このサービスはまさにデザインシンキングや、リーンスタートアップといったサービスの開発手法を実践するために作ったサービスで、このサービス自体もデザインシンキングに基づいて制作されています。一般的にサービスを設計する中でリサーチをすることは重要なファクターとなっていますが、実際調査にはコストがかかり、なかなかスタートアップや中小企業が多額の資金を投資して調査することは難しいという現状があります。そこで、この「&Check」ではかなりクイックにユーザー調査ができる仕組みを提供しています。

 「&Check」の仕組みを使って、「離脱リサーチ」および「解約リサーチ」というサービスを商品化しています。これは、ウェブサイトを訪問したユーザーに対し、なぜ訪問したのかおよびなぜ離脱・解約したのかを直接インタビューできるツールです。離脱・解約の原因を予測するしかないアクセス分析ツールと異なり、ユーザー本人に質問できるため、答えを見ることができます。たとえば「solxsol」においても、あるページにアクセスは集中するものの、商品購入には至らないという事象が起こった時にその原因を調べることができるのです。

▲オンラインリサーチプラットフォーム「&Check(アンドチェック)」

▲オンラインリサーチプラットフォーム「&Check(アンドチェック)」

-コンサルファームに所属されていた際は、企業向け基幹システム等のご担当が多かったと思いますが、どういった経緯でデジタルマーケティングの分野に舵を切ったのでしょうか?

 意識的にデジタルマーケティングの分野でコンサルティング事業をやろうとしたのではありません。あくまで自社サービスを作ることを会社の目的としておりますので、はじめ数々のサービスを立ち上げました。今に至るまでに多くの失敗を積み重ねてきましたが、その過程で、どうやったらサービスが立ち上がるのか、立ち上がったとすれば、どう売り上げを増やすのかといった試行錯誤を重ね、自然とデジタルに詳しくなっていきました。そうする間に、世の中でデジタル案件のニーズが高まり、コンサルティング案件を担当するようになったのです。新規事業の立ち上げには、事業会社、アプリ開発会社、また関連システムの会社など何社かが関わりますが、それをすべて把握したうえで取りまとめる役がいなければうまくいきません。コンサルティング・システム開発・マーケティング・プロダクトマネジメントの全方面を把握したうえで、スケジュールの整合性をとり進められる人材が必要ですが、トータルで経験がある人材は多くありません。逆に、それがJQの強みとなっています。

 

-JQだからこそできるデジタルマーケティング支援について教えてください。

 お客様である事業会社は、対面での営業を知っていても、デジタルの世界でどう顧客ナーチャリングするのかはご存知でないことがほとんどです。どう見込み客の興味を引き顧客へ育てていくかについて、マーケティング的発想で仮説を立て、適切な情報からターゲット層を絞り込み、システムの制約を考慮に入れつつ施策を打ちます。これは、マーケティングとシステム両方の視点を持っているJQならではの支援です。

 

-外資コンサルファームがデジタルマーケティングの分野へ参入したり、広告・マーケティング会社がデジタルに参入したりする動きが広がっていますが、JQの競合が増えているのではありませんか?

 WEB系コンサル会社を見ると、「SEO」や「リスティング広告」など、個別のファンクションを持つ人材がほとんどで、全体像をつかめる人はあまりいないのが現状です。ウェブサービスを例にとれば、特定のページの直帰率が高いので、そのページの直帰率を改善するという個別のファンクションではなく、サービス全体のナーチャリングプロセスから改善点を見出すような動きが必要です。これは、プロダクトオーナーを経験しているからこそわかる視点です。各KPIの対策に終始するのではなく、そもそもそれがどういったプロダクトで、いまどのようなステータスにあるか、根源的に検討する必要があります。また外資コンサルファームも自身で事業運営を経験していない人が多いので、外形的な整理はできても、リアリティのある施策出しはなかなか難しいのではないでしょうか。

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 -あらゆる事業会社が「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を掲げていますが、なかなか成功している企業はないように思います。DXを阻害する要因は何だと思いますか?

事業会社は、単純な利益を求めざるを得ないため進みにくい、これにつきます。DXをやろうと社内で提案しても、どれくらい業務効率が上がるか、どれくらい新規顧客を獲得できるかというのが論点になることが多いでしょう。それに対して明確な答えを出せないのがDXです。その会社にとって全く新しい取り組みですし、これまで行っていたことを単純にデジタルに置き換えるというのとも異なります。

また、現場の反発が大きいのも常です。例えば、自動車メーカーの事例をあげると、販売店の担当者は、対面が最も効果があると意見します。しかし、今の若い世代は対面の時間を割きたくない、チャットでのやり取りのほうが楽だと感じる方が多いのではないでしょうか。しかし、そういった仮説を立ててDXに取り組んだとして、顧客がすぐに自動車を購入するわけではないので、短絡的に効果が見えるわけではありません。

では、どういったアプローチがうまくいくかというと、中長期的な視点で経営層が意思決定し、現場に浸透させていくことです。大量にテレビCMを打ち、キャンペーングッズを用意して店舗へ誘致する・・といった既存のマーケティング手法だけでは、近い将来通用しなくなります。また、すべてがデジタルに置き換わるという勘違いも解消するべきです。あくまで、購入までのマーケティングプロセスの接点としてデジタルがあり、購入までがすべてデジタルで完結するわけではありません。

とはいえ現場の協力なしにはいいサービスを作ることはできません。現場の抵抗力はえてして強いものですが、組織に5%程度はほぼ確実にアーリーアダプターが存在します。その人たちにアプローチし、小さな成功事例を作るんです。すると、自ら社内で広めてくれます。前向きに取り組んでくれる人を見つけて、そこを突破口に進めることがポイントです。

 

-今後ますますデジタルが浸透する中で、JQとしてどのような立ち位置で展開しようとお考えですか。

テクノロジーが進歩するに従い、より細分化され、専門技術を持った人が「たこつぼ化」していく――つまり狭い範囲の特定の技術しか知らないという人が増えていくと考えます。最先端の技術をどう既存のシステムとつなげて、新規事業を立ち上げていくのかを考える際、技術側と、ビジネス側それぞれで会話できる人が確実に必要になるはずです。コンサルタントとしてのJQは、ビジネスも、マーケティングも、システムも分かる立場として、橋渡しの存在でありたいと考えています。

一方サービス提供者のJQでいえば、これまで取り組んできたデザインシンキング・リーンスタートアップの手法を昇華させ、ノウハウ化することで、より高速にサービス開発を行える仕組みを整えたいと考えています。もちろんデザインシンキング等の手法については多数の書籍や参考資料が存在しますが、実践してみるとそれらがいかに概念に過ぎないかがわかります。実際のビジネスに適用する際の課題まで踏まえ、フレームワーク化したいです。新サービスについては社員からも本当に様々なアイデアがあがっているので、ぜひ期待していてくださいね。

 

【プロフィール】

株式会社JQ 代表取締役社長 下田幸祐

https://j-q.co.jp/

JQ代表取締役社長←アクセンチュア官公庁本部←早稲田大学政治経済学部

登山・ランニング・読書・一児のパパ

 

BPR案件や基幹システム開発案件のPMだけでなく、Jリーグ公式アプリやその他デジタルマーケ系アプリ、DMP×MA、AI開発など多くのDXプロジェクトのPM経験を持つ。また自社でもECサイトやデジタルマーケリサーチサービスを企画・開発・運営している。